桜ノ籠 -サクラノカゴ-


 ♢


「寄り道につきあってくれて、ありがとう」

二人で車に乗ると、
青磁先生が私の髪をくしゃくしゃ、と撫でながら

優しくそう言った。



「……青磁先生、今までわざと沙智さんに冷たい口調で話してましたよね?」

ふと、
なぜかそんな疑問が浮かんで、口にすると、


髪を撫でる青磁先生の手が止まった。



「……なんで?」

「だって、沙智さんの前の青磁先生は、いつもと違ったような気がしたから」


「そうかな?」

「そうですよ。いつも優しいのに、沙智さんには何か、冷たかった」


優しいから、
わざと冷たくした。




「俺は、そんなに優しい人間じゃないよ」

「優しいですよ」


「じゃあそれは伽羅だから、かな」



その言葉に、
一気に体中が熱を帯びる。





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