金魚姫
海水浴場の浮き玉のように上下運動をしていた顔があがってきた。


ビーチボールがパンッパンに膨らんだ様な顔の中にはこぼれ落ちそうな大きな瞳、たらこみたいにプックリとした桃色の唇がついている。

くるりとウエーブがかった黒髪がとれたて昆布みたいに肩の辺りにへばりついている。


大きな瞳は瞬きもせずにムサシとヨータを見つめている。


三人はしばらく見つめ合い、短い静寂がプールをつつんだ。


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