金魚姫
「大丈夫?苦しそうにしてたから‥
こいつも僕も溺れてるんじゃないかって‥‥」

ムサシの頭にポンッと手を置きながらヨータが先に沈黙を破った。


ビーチボールは水中にある足元に視線をおとしていた。

その姿勢のまま空気が抜けたような声で、


「泳ぐ練習‥‥
 してたの‥‥。」


かすれた声でつぶやくと大粒の雫がポタンポタンと、流れだし、水面を打っていた。


雫の理由がわからないヨータはただ、オロオロとするばかりでビーチボールに掛ける言葉が見つからなかった。


ビーチボールはプールサイドの階段を登り、フェンスにかけてあったカラフルな水玉模様のバスタオルを引っ掴み、更衣室に駆け込んでいった。

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