雨音色
厳しい視線。


昔から変わらない、しかる時の口調。


「望まない結末であっても、それはその時に悩めば良い。


今はただ、前を向いて、最大限の努力をしなさい。


それが貴方の出来る最大の事よ」


戒めてくれる言葉。


怒られている筈なのに、何故か彼の目頭が、違う感情で熱くなる。


「・・・そうだね」


にっこりと、いつもと同じ、優しい笑顔で彼は答えた。


「よろしい。それでこそ私の息子よ」


母はぼん、と頭を叩いて、居間の襖に手をかけた。


そして暗い廊下を出る。


「あら、お湯加減どうでした?」


「え、あ、・・・丁度よかったです」
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