雨音色
「はいっ」


「ふふ。良い返事」


母が壮介に向って片目を瞑った。


彼はきょとん、と母の方を見るだけであった。


「・・・さて、お布団を敷きますかね。将来夫婦になるって言っても、


壮介、今日は幸花さんとは一緒に寝れませんよ」


「なっ!わ、分かってますって!」


首まで真っ赤にさせて、壮介は必死に反論した。


その様子を可笑しそうに見ながら、母は客室へと向かった。


突如訪れた沈黙。


ぎこちない雰囲気に、彼は彼女にかける言葉を探す。


しかし。


「・・・壮介さん」


「は、はい。何でしょう」


くる、と振り返ったその顔に、


彼は自分の心臓が高鳴ってしまうのを止められなかった。


そして、思い知らされるのである。


もう、否定できない。


彼女の隣に居続けたいという願いを必ず実現させると、


心から望んでいることを。


「・・・突然、ごめんなさい」


「いえ。・・・その、あの、僕こそごめんなさい」


「何故壮介さんが謝るのですか?」
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