雨音色
終わりの始まり
次の日の朝早く、3人は食卓を囲んでいた。


言葉少ないその場は、ただ食器がぶつかる音だけが響く。


「・・・ごちそうさまです」


幸花は立ち上がり、迷いつつも台所へと自分の使った茶碗を持っていく。


「良いわよ。流し台に置いたままで」


「はい」


いつもと同じ、質素な食事だった。


めざしに、つけもの、味噌汁にご飯。


彼女からすれば、生まれて初めて食べる朝食であっただろう。


しかし、彼女は驚きの表情一つ見せず、ただ黙々と食事をしただけだった。


「壮介も早く食べ終わって、支度しなさいね。


・・・昼過ぎには着くと良いけど」


母も自分の食器を片づけながら、彼にそう促した。


彼は黙ったままうなずくと、ゆっくりとご飯を飲み込む。


今日は一段と、ご飯が喉に通らなかった。


箸を持つその手はいつも以上にゆっくりであった。


母もその事には気がついていた。


そして、その理由も、分かっていた。
< 125 / 183 >

この作品をシェア

pagetop