雨音色
「いってらっしゃい」


「うん。行ってきます」


母は2人を見送るために、玄関先まで来ていた。


背をむきだす2人に、突然、母が幸花の手を握った。


突然のことに、幸花は驚いたように母を見つめた。


「・・・いつまでかかっても良いから。私は、貴女を待っているわ」


穏やかな微笑みが、母の顔に浮かぶ。


固まっていた幸花の表情が、次第にほぐれていった。


「・・・ありがとうございます。・・・お義母様」


その言葉に、母はただ黙って首を小さく縦に振るのだった。
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