雨音色
「タマ」
彼は、小さな声で、彼女に声をかけた。
「はい?」
広く静まり返った部屋に、彼の声が響く。
「私は、・・・正しい選択をしたか?」
彼女は満面の笑みを浮かべて、即座にこう、言った。
「はい!正しい選択であったと、断言できます」
彼は、優しい笑みを、浮かべた。
ここ数年、少なくともタマの記憶では、
見たことのないような、穏やかで優しい表情だった。
秋の風が、少し強く、夜の空気の中を横切って行った。
1枚のもみじが、ひらり、と宙を舞うのが、窓から見えた。
月明かりの下、その舞いは、あまりに可憐で、美しかった。
彼はタマに背を向け、呟いた。
「・・・本当の幸せは、・・・こんなに近くに、あったのだな」
タマは、何も言わず、ただ静かに微笑んでいた。