雨音色
肩の力が一気に抜けていく。


今度は彼女が呆気にとられてしまう番だった。


まさかここまで直球に尋ねられるとは予想しておらず、


多少面食らってしまったのである。


彼女はこれまでの見合いの経験上――それも助教授ばかりだったのだが――


上る話題は自己の専攻と自慢話だけだと思っていたからだ。


「無理なさらないでください。正直なことを言っていただいて構いませんよ」


「・・・」


そこまで言われてしまうと、本当の事が言えなくなってしまう。


彼をまじまじと見つめた。


「・・・父にあらかじめそう言われたのですか?」


彼女が怪訝そうに尋ねた。


「いえいえ。貴女様の様子からすれば明らかですよ」


彼が朗らかに答えた。


食事中、彼女は一度も彼の方を見向きもしなかった。


一言も発することなく。


一応相手は学者。


それだけすれば気が付くに決まっている・・・。


彼女は恥ずかしさで自分の頭に血が上っていくのを感じていた。


「実を言えば、僕もです」


「・・・はい?」
< 24 / 183 >

この作品をシェア

pagetop