雨音色
予想だにもしていない発言。


「今日のお見合い、僕も突然入れられて、訳も分からずここに連れられて来て

今貴方と此処で散歩するに至っている次第です」


彼がにっこり笑う。


「・・・そう・・・でいらっしゃるのですか」


突然の彼の話に、彼女は戸惑っていた。


今まで、こんな風に自分の気持ちを正直に話した男はいただろうか。


今まで全ての見合い相手が、自分の家の名誉と財産欲しさに


見合いを申し入れているのかと思っていた。


いや、正確に言えば、


彼が初めて、そのような目的を持たない相手だった。


「えぇ。だからお互い、普通に会話して、この時間を乗り切りましょう」


立ちすくむ彼女の隣に、彼が隣に来た。


一瞬だけ、わずかに心が震える、そんな感覚が彼女に走った。
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