雨音色
「え・・・。あ、ごめんなさい。また何か僕・・・。

あ、牧先生に頭を掻くのは止めろと言われているのに、またやってしまった・・・」


彼が恥ずかしそうに自分の頭を掻く。


「いえ。面白い方だと思いまして。・・・ねぇ、藤木さん」


「はい」


一回胸に息を溜め、言葉と同時に吐き出す。


「専攻は刑法でいらっしゃいましたよね」


「えぇ。独逸刑法が中心ですが」


「刑法の研究についてはお話なさらないの?」


「え、興味がおありなのですか?」


彼が意外だ、と言わんばかりに目を丸くした。


「いえ、ただ・・・」


彼女はますますたじろいた。


フルーツの占いは、どうやら外れそうだった。


今まではそう吹っかけた瞬間に、目を輝かせるのが通例だった。


「聞きたくないでしょう。興味が無い話なんて」


「・・・」
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