雨音色
「貴女は・・・すごく・・・」


夏の匂いを僅かに含んだ強い風が、二人の間を吹きぬける。


「はい?」


長い髪を抑えながら、彼女が顔を向けた。


「いえ、あの・・・。幸・・・花・・・さん」


名前を呼ばれた。


彼女は思わず彼を見つめた。


初夏には珍しく、強い風がまた吹いた。


「もしよろしければ・・・また、この土手に、二人で来ませんか。

その、今度は・・・スケッチをしに」


彼は自分の胸が、今さっきよりも速い速度でその鼓動を奏でているのを感じていた。


自分の頬が赤く染まっていくのが分かる。


そして、気のせいか、彼女の頬も少し赤いように見えた。


藤木は無性に自分の髪の毛をぐしゃぐしゃにしたい気分になった。


「幸花さんがよろしければなのですが・・・」


無性に彼の喉が乾いた。


「あ、はい。是非喜んで・・・。壮介・・・さん」


きらきら輝く水面に、二人の姿が見えた。


そこには、微笑み合う彼等が映し出されていた。
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