雨音色
「お嬢様」


タマが彼女に話し掛ける。


明らかに分かる、彼女の怒っている様子が。


このようなタマの声を聞くのは久しぶりであった。


「本当にあの方なのでございますか?藤木様というのは・・・」


「えぇ。そうよ。それについて何か?」


静かな車内の中、助手席のタマの声が響く。


「いえ・・・。ただ、何故今回はかような方なのかと・・・」


今度は彼女の機嫌が悪くなる番であった。


「私の自由です。あの方が今までで1番良い方なのだから」


「しかし・・・」


「タマ。だまってて」


後部座席からの声は、鋭く尖っていた。


「・・・はい」


それ以降二人は屋敷まで一言も交わさなかった。
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