雨音色
運命
「幸花は今どうしている」


長い廊下で、英雄が心配そうな様子であるタマに話し掛ける。


窓の外からは、残暑に負けんとばかりに、威勢の良い蝉の鳴き声が聞こえてくる。


「はい。部屋に篭りっきりでございます。お食事もあまり手を付けておりません」


タマも同じような様子で、その質疑に応答する。


「もうあれから1週間にもなる。タマ。どうにかして幸花を説得してくれ」


英雄が大きな、そして長いため息を付いた。


「・・・かしこまりました」


タマがその場を立ち去ろうとした時だった。


背後から、珍しく弱い声で、英雄のつぶやき声が聞こえた。


「私は、間違っているか?」


タマは、その歩みを止めた。


「・・・旦那様・・・」


タマが後ろを振り向いた。
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