愛なんて無かった


『彼』に追いついた時はちょうど、お釣りを受け取ってる時だった。

あたしに気づいた『彼』は笑顔を向けただけでお店の外に出てしまう。


また追いかける形で外に出る。


お店の外で、財布を取ろうとしたあたしの手を『彼』の手が掴む。

「俺が誘ったからいい」


そう言って絡める指と指。

そのまま手を繋いで今度は隣に並んで歩き出す。



「ごちそうさま」


『彼』の横顔を見上げて呟くと、あたしの方を向いた『彼』と今度は視線が絡む。



何故だか少し寂しそうな表情を向けられた笑顔の中に見た気がして、あたしは視線を逸らした。


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