愛なんて無かった
思いとは逆に溜め息に似た声が漏れる。
それに反応したかのように『彼』の動きがまた少し早くなった。
少しだけふわふわして、やっぱり誰かの温もりに包まれるというのは良い。
自分の温もりじゃなく他の誰かの温もり。
あたしがずっと欲しかったモノ。
ずっと探してた。
ある時期からそれが簡単に手に入ると気づいた。
こんなにも人で溢れているこの世界は、求めれば簡単に温もりを手に入れられる。
相手に『何か』を期待しなければ。
あたしと今日の『彼』との関係のように。
例え、そこに愛なんて無くとも。
探しても見つからない。
愛なんて。