魔女さんと青春してる僕ら
 いつもより少し多めな夕飯を作り終えると、いつも通り母さんが帰ってきた。
 母さんが筑前煮の匂いにつられ、ドタバタとリビングに走ってくる足音が聞こえる。母さんの筑前煮に対する嗅覚だけは、本当に誰より凄いと思う。

 荒々しくドアが開かれ、まず母さんの第一声が『筑前煮』への愛だ。

「今日は愛しの筑前煮ね!?」

「そうだよ」

「やったぁ!」


 僕が筑前煮を作っただけで大喜び。そんな風に喜ばれると、とても嬉しくなる。――まあ、今日の筑前煮はお隣さんの為なのだけど。


 さあ、これから食べようとしたときに、家のベルが訪問者を知らせた。


「お隣さんだわ!」

「あ、ならこれあげよう」

 わざとらしいな。
 我ながらそう思った。

 僕はわざわざ『美人』のために用意した筑前煮を持つと、母さんと一緒に玄関に向かった。


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