last~舞い散る雪の羽根~
プロローグ
何かが、呼んでいた。


思い出の街。


幼いころに住んでいた街。


おれは帰ってきた。


大きな理由があったわけじゃない。


ただ、なんとなく。


ここに帰りたい。


そんな衝動から、ここに来た。


動物には帰巣本能があるという。


おれにも、そういったものがあるのかもしれない。


街全体が見渡せる丘。


立っている2本の大樹の葉は、すべて枯れ落ちていた。


懐かしのメロディーを口ずさむ。


おれがこの街にいたころ、流行った曲だ。


そのとき、一陣の風が吹いた。



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