秘密の花園


「ねえ。聞いていい?」


店員が早々に持ってきた枝豆を摘みながら尋ねる。


「なんだよ」


サタンはしかめっ面で枝豆を口に咥えた。


普通の枝豆なのにサタンが食べると、得体の知れない魔界の食べ物に見えてくるから不思議だ。


「どうして私の髪を切ろうとしたの?」


私は常々疑問に思っていたことをサタンにぶつけた。


だっておかしいじゃないか。


まみちぃが言った通りサタンが本物のカリスマ美容師で、声を掛ければ女が集まってくるような類の男ならば、私を騙してまでカットモデルをさせた意味が分からない。


サタンは店員が持ってきたビールを呷りながら言った。


「……お前の髪が柔らかくて、綺麗だったから」


まさかそんなことを言われるとは思わなかったので、私は口の中で転がしていた枝豆をサタンの顔めがけて吹き出してしまった。


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