秘密の花園
「ファンデーションは自分の肌の色をよく考えて選べよ」
コスメショップにはカラフルなパレットや可愛い小瓶達が所狭しと並べられていた。
サタンが次に連れてきたのは駅ビルのテナントとして入っていた、大型コスメショップだった。
当然、ここで買うのは化粧品だ。
赤、ピンク、オレンジ、黄色、水色。
どこを見ても甘いパステルカラーばかりで、クラリと倒れてしまいそうだった。
“The 女の子”みたいな空間は少し苦手だ。
魔王は男なのにどうして平気でいられるのだろう。
美容師という職業柄、コスメショップに慣れているのか?
適当な色合いのファンデーションのコンパクトを手に取ると、間髪入れずサタンにチェックされる。
「お前は血色が悪いから少し赤身が入った明るめの色の方にしておけよ」
どの色が適正かなんて分かるか、ボケ!!
心の中で呟いて、コンパクトを静かに元の位置に戻す。
同じ肌色だというのに種類が何個も用意されていることが、嫌がらせのように思えてくる。
ここから一つの色を選び出すなんて、とてもできない。
私は途方に暮れてしまった。
こうなったら展示されている試供品を片端から試してやろうか……。
そう思っていると意外や意外、サタンから助言を与えられた。
「ほら、ここからここまでの色で肌に馴染むやつを選べよ」
丁度見ていた棚の2点を指差される。
「……ありがと」
もごもごと呟いた感謝の言葉はサタンに届いたのか、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。