秘密の花園

ピエール様の言う曲者の正体は直ぐに判明した。


お店に入って真っ先に聞こえてきたのが、キーキー喚くうるさい女の声だったからだ。


「嵐子を待たせるなんてどういうつもり!?」


私は呆然と入口に立ち尽くした。


……こいつかよ。


嵐子は営業用スマイルを顔に張り付けているサタンに食って掛かっていた。


可愛らしいお顔立ちには似つかわしくない、乱暴な口調である。


ホント性格悪いな、この女!!


水瀬さんに色目を使っていたことを思い出して、イラッとする。


「申し訳ありません。ご予約のお客様を優先してご案内しております」


サタンはあくまでも穏便に済ませたいのか、ひたすら謝罪を繰り返している。


相手が私だったらとっくの昔にぶっ飛ばされているだろう。知らぬが仏というやつなのか。


「信じられない。なんて店なの!?最悪―!!」


その言い草に順番を待っている他のお客さんも顔をしかめていた。


マダムは礼節を重んじる。相手への敬意を欠く行為は見るのも嫌いなのだ。

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