秘密の花園
「お前、純が好きなんだろ?」
「だ…だから…何よ?」
突然恋心を確認されたことを不審に思い、拳を胸の前で構える。
オタク女は恋する資格もないって言うのか!!それなら魔王面のあんたが接客業やる資格もないわ!!
私は断固戦うぞ!!エクスカリバーはないけれど!!
けれど、悲しいかな。サタンは私の力など到底及ばない超強力呪文を唱えたのだった。
「純も撮影来るぞ」
「え…?」
思わぬ名前が出てきて聞き返してしまった。
サタンも今度は丁寧に事情を説明した。
「あいつも美容師として参加するんだよ。この間俺が支店にいたのはその打ち合わせ」
み…水瀬さんも…!?
倒すと息巻いていたのはどこに行ったのか。私はすっかり骨抜きになってしまった。
水瀬さんと一緒…。水瀬さんと一緒…。水瀬さんと一緒…。
頭の中で噛み締めるようにリピートする。
「もう一度聞くぞ。オシャレな服着てメイクもしてもらって、綺麗になった自分を純に見てもらうって気はねーか?」
魔王はジワジワと花園を侵略し始めたのだった。