秘密の花園

コイノチカラ





もしこれが乙女ゲーならば、恋愛パラメーターを上げる大チャンスなんだと思う。


けれど、現実に起こるとどうしたらいいかわからない。


だって私は花園の住人。3次元の対処法なんて攻略本には書いてない。


とりあえず、振り上げた拳をゆっくり下ろして背後に隠す。


ひとりで叫んで盛り上がっているのは、誰が見ても変人だ。


「こんにちは」


水瀬さんは先ほどの私の奇行などなかったかのように、真夏に咲くひまわりのような輝くばかりの笑顔を向けてくれた。


「こ、ここ…こんにちは…」


声が裏返らなかった自分を褒めてあげたい。


水瀬さんの突然のご登場に私のテンションやら体温やらが急上昇している。


もっと重症なのは頭の中で、先ほどからサタンの美容院にいた天使様がリンゴンリンゴンと鐘を鳴らしていた。


「理香ちゃんってここでバイトしてたんだねー」


「は、はははい!!」


意味ないこととは分かっていてもバイト用のエプロンを伸ばして身なりを整える。


条件反射とは恐ろしい。自分にもまだ俗世間の女の子らしい部分が残っているとは…。




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