秘密の花園
「ど…どうぞ…」
会計を済ませた本を紙袋に入れて、震える手で渡す。
水瀬さんの顔は直視できず、作業台のきったねー染みをひたすら見つめた。
「ありがと。バイト頑張ってね」
「は、はい!!」
水瀬さんは本を受け取ると、カバンに丁寧にしまい店の出口へと歩みを進める。
重みを失った手は寂しく、元の位置に戻った。
ああ、これで夢のひと時は終わりなんだと現実を思い知る。
出口に向かう水瀬さんの背中はすごく遠くて、やっぱり私なんかが想いを寄せる隙もないように感じた。
なんで私ってば水瀬さんのこと好きになっちゃったんだろう…。
どうせ無駄なのに。
この距離を埋めることなんてできっこないのに。
こんなに近くにいるのにゲームの中のソウイチさんより遠い。
そうか、これが恋ってやつなのか。
だとしたらちょっと切ないんじゃないですかね、神様。