◇◆あじさい◆◇
私は家に戻ると、父は入れ違いで病院へ向かったのか静まり返っていた…。


部屋でアルバムを引っ張り出すと、幼い頃の写真を眺めていた。


懐かしい思い出が詰まった写真には、母と私がいつも寄り添って笑っていた。



ゆっくりと流れる時間は、まるで母との距離を埋めていくかの様で、とても和やかなものだった。



夕方に近付くと、私は台所に立ち、夕食の支度を始めた…。

料理なんて全くと言っていい程、初めてに近かった。

米をとぐと、適当に水を入れ、スイッチを押した。

ぐちゃぐちゃの玉子焼きに、味の足らない味噌汁…。

きっと、父に笑われると思いながらも、精一杯の気持ちだった。
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