【短編】プロポーズはバスタブで。
「観たい映画、決まってる?」
助手席に乗り込むと、すぐに孝明が聞いてきた。
今日公開の『BEAT!!』とという、高校生ロックバンドがメジャーデビューを目指す青春モノを観ようと思う、と言うと。
孝明も「よさそうだな、それ。なんかワクワクする」なんて言ってすぐに観る映画が決まった。
恋愛映画にしようかとも思ったけど、フラれるのにそれもな・・・・と考え直したりして。
ホラー映画やアクション映画はあんまり得意じゃないし、コメディって気分でもないし。
結局、孝明から妙な電話があった日に朝までかかって探した映画で観られそうなのは『BEAT!!』くらいしかなかった。
「仕事、残業が多くて疲れてるってこの前言ってたけど、今日デートで大丈夫だった?」
「うん。孝明に会うときは別」
「おぉ〜、嬉しいコト言ってくれんね。まぁ、俺もだけどさ」
ヘヘッ。
そう照れくさそうに笑いながら、孝明はカーラジオのチャンネルを合わせはじめた。
少しの間ザーザーと雑音が続き、その後とらえた電波は夏の高校野球、3回戦の中継。