【短編】プロポーズはバスタブで。
このときのあたしは、その絵にただただショックを受けるばかりで全然気づいていなかった。
紙の端に小さな字で沙織からのメッセージが書いてあったことも。
孝明がどうしてあのホテルに泊まろうと言い出したのかも。
そして、コソコソしていたり隠し事をしていたり・・・・と、ずっと様子が変だったことも。
あたしは本当にバカで、自分のことしか考えられなくて、勝手に最悪の妄想を暴走させていたけど。
その裏で孝明は、出会った頃からずっと変わらない想いであたしをのこと考えてくれていたんだね。
とっておきのサプライズ、用意してくれていたんだね・・・・。
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週末。
そんなこととはつゆ知らず迎えた土曜日、デート当日の午前11時。
マンションの下で孝明を待っているとあたしの前に車が止まった。
「よお!久しぶり!」
助手席の窓を開け、中から窮屈そうに顔をのぞかせたのは2ヶ月ぶりに見る生の孝明。
そして、これからあたしを振ろとしているだろう孝明。
・・・・にも関わらず、その笑顔はやっぱり爽やかで、あたしの胸は否応なしにキュッと痛んだ。