【短編】プロポーズはバスタブで。
「泣くのは今だけ!あたしは1人でも大丈夫な強い女にならなきゃなんないんだから!」
そう言って・・・・チャプン!
溢れ出る涙を流すために、勢いをつけて湯ぶねに頭ごと沈めた。
───その直後。
バンッ!!
バスルーム中に、地震かと聞き間違うほどの大きな音が響いた。
かと思えば。
「ヒカリっ!! 思ったんだけど、疲れてんじゃなくて何か悩みがあるんじゃ・・・・っておいっ!!」
ジャバジャバ!! バシャーン!!
「おいっ!! なんで頭まで浸かってんだよっ!! 死ぬなヒカリ!!」
慌ててバスタブへ飛び込んでくる気配と、孝明の緊迫した声がほぼ同時に聞こえてきて。
あっという間に、あたしの体は孝明に抱きすくめられていた。
「死ぬなヒカリ!!!!」
「・・・・あ、あの、孝明? 溺れてるんじゃないよ、あたし」
「はっ?」
「あのー・・・・とりあえず、恥ずかしいから見ないでくれるかな」
状況を説明する余地さえなく助け出されたわけだけど・・・・いやいやあたし、溺れたりしないから。