奥に眠る物語
私は彼が席についたのを確認して、注文をとる。

「今日はどうします?」

「んー 今日はコーヒーにでもしようかな」

彼はそう言いながら、好戦的な視線をオーナーに送る。

それを視界の端で受け取ったオーナーは睨み返す。

二人の間からは火花が見えそうだ。

間に挟まれている私の身にもなって欲しい。

「・・少々、おまちください」

ペコッと彼に頭を下げてオーナーの元へ行く。

オーナーは不機嫌を隠さずにコーヒーを淹れているところだった。

「あの、川上さん・・・?」

「ほら、注文のやつ」

私の言葉を無視して、コーヒーを無理矢理渡してくる。

なんなんだ、この雰囲気。

「お、お待たせしました」

「・・これが、あの人の心か」

「? どういう意味ですか」

「・・秘密」

彼はそう言いながら、何もいれずにコーヒーを飲んだ。

オーナーといい彼といい、なんで大人は砂糖とかいれずに飲めるんだ、甘いほうが美味しいのに。

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