奥に眠る物語
「へぇ。 なにやら・・悩んでるのかな?」

そういいながらオーナーをチラリと見る。

私は苦笑いしかできない。

「・・お客様、俺に何か御用ですかね」

「いや、そういうわけではなくてね。 ただ、貴方はどうしてそんなに気持ちを表に出さずにいられるのか不思議でね」

カウンターから、オーナーが彼に問いかける。

彼はするりとかわしてちょっとだけ攻撃してみている。

すると、オーナーがこちらにやってきた。

「そりゃぁ、お前さんと違って俺は年食ってるからな。その辺の若造に言われたかねぇよ」

「おや、僕は貴方より年下に見えると? 貴方もまだまだですね」

・・・あれ、ちょっと待て。

この会話からすると・・彼はオーナーより年上ってことになるのか?

いやいやいや。絶対ありえない!!

彼はどう見てもまだ二十代前半だろう。

でも人は見た目で判断できないし・・・

私は一人別のことを考えていると、急に背中に悪寒が走った。

二人を見ると、また冷戦状態。

あぁ、なんだろう 二人の間に吹雪が見える・・・

「・・お前、何歳だ?」

「何歳に見えます?」

質問に質問返し。

あれ。今度は二人の後ろに虎とか龍が見えてきたよ・・・

「あ? そりゃお前・・二十代前半ってくらいだろ」

「貴方に僕はそう見えるのですか」

そういいながら、彼はコーヒーを飲んだ。
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