夏の約束
あまりにも急なことで俺は一瞬、何のことだと思った
俺はてっきりその手術で翔は確実に良くなるものだと、そして必ず成功するものだと思っていたのだ
「成功する確率が低いんだって」
話しながら、翔はだんだん視線を下げていった
「でね、もう話せなくなっちゃう前に勇希にお礼したいなって
何か欲しい物とかない?
僕のお小遣いで買える物ならなんでもいいよ」
「し、翔…」
「あ、そうだ
勇希」
翔はにこりと笑った
「今までありがとう」
俺は体の中にある血がさっと引くのを感じた
暑いはずなのに、言葉の重みに鳥肌が立つ
「勇希が毎日遊びに来てくれてね、とっても楽しかった
色んな話したりゲームしたり
今まで見たことないものとか見せてくれたり
本当にとっても楽しかったんだ」
漫画を一緒に読んだり、持ってきたゲームで対戦したり
翔に宿題を教えてもらうこともたくさんあった
学校でおこったことを翔に聞かせたり
一日二時間という短い時間の中で、本当に色々なことがあった
「だから本当に今までありがとう」