夏の約束
転校
「勇希、大切な話があるの。二つ、いいかしら」
その日の夕食の時、母さんがそう切り出した
俺はその日のメニューであるハンバーグを呑み込んだあと、何、と聞き返した
「まず最初は明日おじいちゃんが退院するから、学校終わって病院に行くでしょうからそれを手伝って」
それはもちろんそうするつもりだった
そのあとに、少々気まずいが翔の病室に行くという予定
「もう一つは?」
母さんは少し言いずらそうに目を逸らした
なんだかとても悪い予感がした
「本当に急なんだけど、父さんの、その、転勤が決まったのよ」
転勤
その意味はいくら馬鹿な小学生である俺でも分かる
父さんが転勤するということは、俺が転校するということだった
「い、いつ?」
俺の予感はいつも悪いほうばかりが当たる
そして、今もそちらの予感がしていた
心臓がドキドキと煩い
「来週なの」
母さんから聞かされた日にちは、翔の手術の日だった
今日は厄日のようだ
俺はいるかも分からない神様の意地悪を呪った