夏の約束



「そろそろ手術室に入ってください」



言いかけた俺の言葉を遮り、いつの間にか来ていた翔の担当医は翔を促した


翔は俺のことを気にしながらも手術室へ歩く


今言わなくては

今じゃなきゃもう会えなくなってしまう


俺は勢いよく椅子から立ち上がった



「翔!

二十歳、そう二十歳になったときまた会おう!」



翔は驚きながら振り向いた


担当医が俺の大声に顔をしかめたがそんなのは気にしない



「二十歳になった年の今日、ここで待ってる!

あの木の下で待ってる!」



翔はその言葉に笑いながらその部屋に入っていった



「絶対、待ってるから!」



手術室のドアがしまった後、呆然としつつも出口へ向かった


成功するか分からない手術で、未来で待ってると言ったのだ

翔は絶対成功させてくれる

頑張ってくれるはずだ


俺は若干滲んだ目を拭い、病院を後にした


待ちかねていた親に連れられ、翔の手術を祈りながら今まで過ごした町から出た

絶対、戻ってくると誓って


< 28 / 34 >

この作品をシェア

pagetop