優しい旋律
先生、聞いて。

回想

彼女が初めてこの教室に入ったのは、2年前、高校1年生の春だった。


吹奏楽部に入部する為、この教室に入った時も、


丁度こんな風に、教室をオレンジ色の光が照らしていた。


この高校は吹奏楽が強いことで有名な私立高校で、


この部に入る為、入学してくる人も少なくない。


彼女もその一人であった。


しかし、吹奏楽部はその厳しさでも有名で、


入部当初の3分の2は半年後に退部しているのが常識であった。


彼女と一緒に入った同級生も次々と辞め、


新入部員は、入部後直ぐに彼女一人となってしまったのである。


とりわけ、顧問の教師の厳しさが退部の主な理由であった。


休み無く続く朝練習と放課後練習。


毎回出されるヘビーな課題に、的確だが、非情な批判。


誰しもが苦渋を感じるこの部活を、彼女が今日まで続けてきたのはあの日のお陰だった。











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