狙われし王女と秘密の騎士

バルがいなくなった所で、私はナチさんに向き合う。
そして、自分の身分を明かそうとした。


「ナチさん。あの、実は……「シュリ君」


すると私のセリフを遮った。
その顔を見つめると穏やかに微笑んでいる。


「シュリ君。ありがとう」
「え?」
「言ったでしょう? “生きて”と。だから生きていてくれてありがとう」
「ナチさん……」


そして、私の手を握り軽く首を横に振った。
それは“何も言わないで”と言うように。
その時にバルが戻って来てしまい、話しは途切れてしまった。
その後もナチさんは変わらぬ笑顔で手料理を作って私達をもてなしてくれた。

ずっと気がついていたはずだ。
私が王女であるということを。

なのに、気がついてない振りをしてくれた。

知人が遊びに来たかのように振る舞ってくれた。

私が言いにくそうにしたから。
気を遣ってくれた。

最後まで笑顔で。

母のような温かい笑顔で、シュリ君と呼んでくれた。

凄く嬉しい。
ものすごく嬉しかった。

ありがとう、ナチさん。






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