狙われし王女と秘密の騎士


エルシールはすっかり元に戻り、街も活気に満ちている。
あの事件などなかったかのようだ。
あれから、お頭も時々街の様子を伝えてくれていた。
お頭はカイルの事は何も聞いては来ない。
私が何も言わないからなのかもしれないが、そこから何かを感じとったみたいだった。
がさつな所のあるお頭も、そういった気遣いは大人である。

実は、あの分かれた日から直ぐに、私と父王はナリエル国王に正式に挨拶をしに行ったが、そこでカイルに会うことはなかった。

そんなもんだよな、なんて一人で納得しているつもり。
ナリエル国王は、カイルは公務に出ていると話していた。

忙しいのだ。
だから会えなかった。
仕方ないことだ。

そうでも思わないと、なんだか胸がキュッと苦しかった。





< 183 / 201 >

この作品をシェア

pagetop