狙われし王女と秘密の騎士
着替えて振り向くと、そこには私のドレスを着たルカが立っていた。
「何を…しているの…ルカ。」
ルカは柔らかく微笑んだ。
嫌な予感に心臓が激しく鳴り出す。ルカのその姿はまるで一国の王女のよう。
そう。まるで私のように。
「シュカ様。国王様より、これを預かってまいりました」
その手には綺麗な装飾の施された短剣があった。
その柄にはこの国の紋章が小さく彫られている。
「お父様がこれを私に…!?」
「生きろと。そうおっしゃっていました」
「お父様は?お父様は今どうしているの!?」
国王である父の様子が心配だった。
城の中に攻め込んできている敵に見つかったら……。
想像しただけで血の気が引くような気がした。
しかし、ルカは軽く首を振る。
「わかりません。私にそれを託した後、剣を持って部屋を出て行かれました」
「そんな……」
「姫様。生きてくださいまし。そして、再びこのエルシール国を……」
ルカが私の手をきつく握りしめる。
扉の向こうの喧騒は大きくなってきていた。きっと衛兵が食い止めてくれているだろうが、この部屋が押し入られるのも時間の問題だ。
「さぁ、抜け道はこちらです」
本棚の下の扉を開け、わずかな本を取り出し奥の壁を押すと人一人分の通路がある。
その隠し扉を開けて、ルカは行けと指を指す。
「ルカ。あなたも一緒に行こう!?」
「いいえ。私にはやるべきことがございます」