狙われし王女と秘密の騎士


「今、街から帰った人から話を聞いたんだけど、このエルシールはサルドアの植民地となったようよ」
「植民地!?」


そんな。それでは完全にサルドアの手の中に。
ではこれからこの国はどうなってしまうのだろう。
国民は?お父様は?


「こ、国王は!?どうなりましたか!?」
「噂だと、まだ生きているらしいわ」


生きてるっ!あぁ、お父様!生きていらっしゃるのですね!
安堵で力が抜けそうになる。まだ安心は出来ないがそれでも安否が知れたことは大きい。
涙が出そうなのをグッと堪えた。
しかし、ナチさんは複雑な顔だ。


「悔しいよ。こんなあっさり、サルドア国の物になるなんてさ」


悔しそうに唇を噛む。そうだ。辛いのはみんな一緒だ。エルシール国民のがこれからどういう扱いになるのか保証はない。下手したら生活苦、奴隷など厳しい状態になることだってある。


「王族はみんな捕まったのか?」


ひとり落ち着いた声でカイルが尋ねた。
そうだ。王族全員捕まったのか。親族は少し離れた宮にいるがどうなったのか。
私は幼いころ母を亡くしたためいない。父は側室を持たなかったので子供も私しかいないのだ。だから兄弟はいない。だからこそ、ルカは私を必死に逃がしてくれた。
そのルカはどうなったのだろう。
ナチさんに聞くとなんとも苦い顔をしている。


「姫様も捕まったらしいけど、詳しくはわからないよ」
「そんな……」


やはり捕まってしまったのか。でも、きっとルカは殺されていないと思う。
そう信じたい。
そう信じないと私は立っていられそうになかった。


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