狙われし王女と秘密の騎士




一瞬にして辺りは暗闇と静寂に包まれる。


「ルカ、お父様……。みんな……」


涙がとめどなく溢れてくる。
どうして。どうして。私一人がここにいるの。そればかりしか思い浮かばない。
私はなんて無力なんだろう… 。
私は王女なのに…。
このエルシール国のたったひとりの王女なのに。
戦うことすらもできない。


“生きて”


ルカの声が頭の中にこだまする。

ルカはどんな思いで私を逃がしてくれたのだろう。
私になりすまし、その身はきっと敵国に捕まってしまう。どうなるのかわからないというのに。
でも。
だからこそ。
私は逃げなければならないのだろう。お父様が今どうなっているのかわからないなら尚更。
私に希望を残したんだ。

泣いている場合じゃないわ。
私は顔を上げて涙を拭いた。
時期にここの隠し通路もバレてしまう。


逃げなければ。
生きるために。
彼らの希望の火となるために。


私は通路をひたすら走った。走って走って。
城外に続くこの道は、暗く終りがないように感じる。


この道はお父様がもしもの時は使いなさいと造ってくれた。
だから分かれ道のも戸惑うことなく進むことができる。
でもまさか本当に使う日が来てしまうなんて……。

ひたすら走り、フッと風を感じた。
あっ!出口だわ!
かすかに空気が出入りする場所がゴールだった。
重い石の扉を必死にこじ開ける。
ソッと出口から顔を覗かせ、周囲に誰もいないことを確認する。
良かった。誰もいない。
外へと出ると、その明るさに目が眩んだ。

夜だというのに…?

なぜ…。

ゆっくり空を見上げる。

あぁ、そうか。

今日は新月なのだろう。






赤い大きな月が私を照らしていた。















< 4 / 201 >

この作品をシェア

pagetop