狙われし王女と秘密の騎士


「噂よ?噂。どうやらこの領土の何処かにある地下牢に入れられてるらしいって」
「ここにっ!?」


声が思わず高くなり、おばちゃんに口を塞がれる。
すぐに離してくれたが、私は驚きを隠せなかった。
お父様とルカが近くに居るかもしれない。そう思うと居ても立ってもいられない気持ちになる。
しかし、隣のお頭は不審げに眉を潜めた。


「本当かよ。普通、陛下はサルエル城かエルシール城の牢にいるんじゃぁねぇのかぁ!?」


するとおばちゃんは手をパタパタと振り、噂だと強調した。

「噂よ、噂。この町にいつの間にか広まっていたのよ。信憑性はないわ。一部だとエルシールの反乱軍を撹乱させるためにここにしたとの話」
「貴女はそれを俺らに話して大丈夫なんですか?普通、敵国王の居場所なんて教えないでしょう?」


カイルが尋ねるとおばちゃんは首を横に振った。


「この町ではその噂で持ちきりよ。私以外でもみんな普通に噂しているわ」


つまり、遅かれ早かれ噂は耳に入るということだ。


「それで陛下はお元気なんですか?ル……姫は?」


私が少し早口に尋ねるとおばさんは困ったように微笑むだけで、それ以上はわからないと言った。
再度、あくまでも噂だと付け加えて仕事に戻っていった。

でも十分な情報だ。
お父様とルカはまだ生きている可能性がある。


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