狙われし王女と秘密の騎士


「とりあえずはここはまだサルエル領地だ。下手に動くのはマズイんじゃないかな」


カイルは顔色変えずに言う。


「でも、近くにいるっていうのに」
「三人で何が出来る?」


静かに見つめられて言葉に詰まる。


「下手に動いて捕まったら、基もこもない」
「捕まらないようにやれば……」
「策はあるのか?三人でエルシール国王を救い出す策は。無謀だ」


カイルの言っていることはわかる。
ごく当たり前の意見だ。しかし、近くにお父様がいるとわかった以上、やはり素直に頷けはしない。


「でも……」
「まだダメだ」


納得出来ずにいると、カイルははっきりと否定し、意見に私は黙り込む。
確かにその通りだけど頷けない。だって、私は娘なんだから。
むくれて俯いていると、黙って聞いていたお頭も頷いた。


「カイルさんの言う通りだ。三人じゃぁ、ちと無謀だぁな」
「お頭…」
「シュリの気持ちは分かるぜぇ。でも俺達がここで捕まったら陛下を救い出す希望が減っちまうってぇことだ。希望は多い方がいい」
「…うん…」


お頭の言う通りだ。
でもわかってはいるけど、気持ちはやはり、まだお父様を探しているんだ。

私は悔しさから唇を噛み、そっと宿から見える夜の町を見つめた。



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