拘束お姫様 *番外編開始
*
紺碧の空に浮かび、優しい光を放つ満月を、ただ彼女――シンデレラは見上げていた。
冷たい風が、頬に触れる。
「クロード、様……」
彼の名を呟けば、枯れることのない涙がまた一粒、零れ落ちた。
( あなたにも、いつか大好きな人が出来るのね )
眠っていた過去の小さな欠片が、鮮明に思い出される。
( どんな人なのかしら。楽しみだわ )
( あたしが大好きなのは、母様と父様だけだよ? )
( 大人になれば、それとは少し違った〝大好き〟な人が、出来るわよ )
その母様の優しい微笑みを、忘れることなんてない。
「……母様、あたしが奴隷でなければ、クロード様は……傍にいてくれるのかしら」
本当は、いろんな事を母様に相談したかった。
一人で悩むのは、辛いよ。