拘束お姫様 *番外編開始




紺碧の空に浮かび、優しい光を放つ満月を、ただ彼女――シンデレラは見上げていた。

冷たい風が、頬に触れる。


「クロード、様……」

彼の名を呟けば、枯れることのない涙がまた一粒、零れ落ちた。


( あなたにも、いつか大好きな人が出来るのね )

眠っていた過去の小さな欠片が、鮮明に思い出される。

( どんな人なのかしら。楽しみだわ )

( あたしが大好きなのは、母様と父様だけだよ? )

( 大人になれば、それとは少し違った〝大好き〟な人が、出来るわよ )

その母様の優しい微笑みを、忘れることなんてない。


「……母様、あたしが奴隷でなければ、クロード様は……傍にいてくれるのかしら」

本当は、いろんな事を母様に相談したかった。

一人で悩むのは、辛いよ。


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