拘束お姫様 *番外編開始
月明かりだけが照らす、広いその部屋の中には、誰もいない。
けれど冷風が頬を撫でる夜空の下(もと)、一人の少女が、バルコニーにいた。
夜風が、彼女の体温を奪い、そして頬を伝った涙の跡を消していく。
「……やっぱり、奴隷(あたし)は王子様に相応しくない」
奴隷が誰かに愛されることなんて、ない。
一時の間でも、少しでも愛されたことに、一生の喜びを感じないといけない。
なのにあたしは、永遠の愛までを望んだ。
だから、罰を与えられてしまった。
その罰を、素直に受け入れましょう。
嫌がれば、愛しい彼は冷めた瞳をしてしまうから。
その瞳を見るのは、とても悲しいから、だから――
「あたしは、クロード様の傍から……」
「〝離れる〟って言うのかい?」
え? と驚いたときにはすでに、シンデレラは後ろから抱き締められていた。
「残念だけど、僕は君を離さないよ」
肌で感じるその久しい温もりに、耳元で囁かれるその柔らかい声に、胸の中から込み上げてくる想いを、必死に抑える。