迷姫−戦国時代




樂崋



男は伏せていた目をゆっくりと見開いた







ああ、なんて懐かしいんだ











あの頃私は医師として宴に参加していた








だがあの日を境目に全てが変わったんだ










激しい憎悪、嫉妬、怒り、そして哀しみが生まれた







そして



あの方は言った


「我が愛した人よ。そなた達は罰を受けるのだ」















・・・ナンセンスだ

男は肩で溜め息をついた。長かった思いが漸く動きだしたのだろうか








そ れ を 阻 止 す る 為 に 私 が 参 っ た の よ



だが先程の舞歌の言葉に私は思わず身震いした。あの娘は己の言葉を曲げないプライドの高い娘だ。追々何か手を打ってくるだろに





さて、己はどう動くか



この幼い千紫の娘を助けるか、”また”黙って見過ごしてしまうか・・・




千紫の血を引く娘とは。容姿は全くといってもいいほどあの者とは似ても似つかない。だがきめ細やかな髪の色は太陽に当たらずにも美しく反射するその髪は明らかにあの国の証し








「私は樂崋を完成させるように頼まれました」







美羽の言葉に男は再び耳を疑った。だがそこであの方の残した続きを思い出したのだ








「・・・だがもし、また宴をする者が現れたのならば」
















    私はまた人を愛しよう















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