迷姫−戦国時代




歌い終わった玄司に対して丁寧にお礼をした美羽は何処か考え込む様子だったがそれは玄司の言葉に遮られた









「これは二人だけの内密に・・・。貴女と小生の関係は囚われた患者と医師だ」




そう言い急に美羽の左手をとり包帯を巻き直し始めた玄司に、直ぐ様その言葉の意味を理解した美羽は小さく頷いた











刹那




玄関から急に人の気配を感じ、玄関が開かれたのだった





「薬草を・・・採ってきたぞ」




無愛想に話す男、基滝沢だった


滝沢の腰に付けられた巾着を見れば、確かに膨れ上がっていた



それを玄司に渡すや否や、細く研ぎ澄まされたような瞳を美羽へと向けた






「体調が戻ったのなら今すぐ発つ」

「待つのだ。どう見ても回復などしてない。今の状態で旅などまたいつ倒れても可笑しくない。これは医師から忠告だ」


滝沢の言葉に直ぐ様反論した玄司だが、彼はそれを耳にしようとせずただ一点美羽を見つめた








美羽は目を伏せ一旦考えたが、次には玄司の方へ真っ直ぐ向いたのだった


「玄司様。お願いがあります。ーーーー」





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