もう一度…
おばさんとお医者さん以外には誰にも、何も言わなかった。
前の学校の友達にも何も言わず、転校してきた。
雪にも何も言わず、勝手に家を出てきた。

「みんな…少しは気にしてくれてるかな」

それとも

「…もう忘れちゃってるかな…」


手のひらの中の一枚の小さな花びらを握り締めて、砂菜は俯く。
サアと風が吹いて砂菜の長い髪の毛が揺れた。



キーンコーンカーンコーン…







転校初日、始業ベルはもう鳴った。
行かなきゃならない。
分かっていてもーー足が、進まない。

…だってもう誰もいないのに。
誰もそばに、いない。







「ー…っ」










ポタッ…と花びらを握り締めた手の甲に滴が落ちたーー。
< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop