パステルクレヨン


玉置は小さい頃から絵を書くのが好きで、もう高校に入学したあたりから親戚のコネでイラストレーターの手伝いみたいなのをバイトでしていた。


『俺にとって一番は絵かなぁ。でも絵は趣味でしかないから、職業は勉強で探すよ』



確か、前にこんなことを言っていた。



「俺が寂しくさせたのが悪いのかもしれないけど。だから浮気したのかもしれないけど。


それでもさ、俺は嫌だったんだよ。鳴海のために精一杯自分の時間を削ったつもりでいたからな」



なんでか分からない。


なんでか分からないけど、視界が歪んで、涙がぶわぁっとあふれた。



「なんでお前が泣くんだよ、泣きたいのは俺の方だよ早瀬」


玉置があたしの頭に手をぽんっと置こうとする。



「触んないでーーーーッ!!!」


あたしは玉置の胸をドンッと押す。


「うわっ」


勢いよく押された玉置はバランスを崩してフェンスによりかかった。




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