銭コ乗せ
「よーし、あんた、それ、あっちに置いてきておくれ。」

ようやく足を止めたババアの前には、ボロボロの民家が建っていた。先にその中にババアは入って行く。

「いったい、なんなんだよ…」

愚痴をこぼしながらも、勝手口の横にリヤカーを止めると、

「あがんな。」

ババアの呼び声に従って、僕も中に入った。どうやら、ここは、ババアの家のようだ。

中は昭和初期の匂いが古臭いものだったが、意外とキレイにしてある。

「とりあえず、これ、飲みなさい。寒かっただろ?」

ババアがポットから湯を注いでココアを出してきた。
文句一つ言わず、僕はそれを一口すすると、自分がいかに冷えきっていたかを知った。

食卓テーブルの椅子に座らされると、状況が飲み込めずに妙にそわそわした。
自然とココアを飲むペースが早まる。

ババアは台所で、何か料理を作っていた。作業を続けたまま、背中ごしの僕に指示を出してくる。

「そうだ。お風呂沸いたら入んなさい。着替えは息子のお古でいいかい?」

「あ、ああ。」

ババアのテキパキとした行動に圧倒され、僕は気の抜けた返事をすることしか出来なかった。
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