《短編》一夜の想い
そう。信ちゃんには彼女がいた。
五年付き合ってる綾さん。会ったことは無いけど束縛の激しい人。

女の子と遊ぶのはもちろん、携帯に名前が有るのもダメらしい。
私の番号も男の子の名前で登録してある。
連絡も私からは出来ない。一緒に居るときだと大変だから。
信ちゃんから連絡が来るのを待つばかり。


そんな面倒な女なのに、信ちゃんは大好きらしい。
だから、私は彼女じゃなく友達として一番になれるように努力した。
ノリの良い、まるで男の子のようにサバサバした子になった。

何でも良い………


ただそばに居たかったから。

なのに今更………

「何で?」


『何でなんだろう。何がいけなかったのかなぁ?』


見上げたら、そこには信ちゃんの辛そうな顔。
そんな顔しないで。


そっと信ちゃんを抱きしめた。
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