胡蝶蘭
ココロ ノ ウチ ヲ
*
冷え込む。
偉槻は手をこすり合わせた。
息を吹きかけても、指先の感覚は戻ってこない。
…早く出てこい、誓耶。
校門から出ていく生徒が、不審そうに偉槻を眺めていく。
その視線から身を守るように身を縮め、偉槻は誓耶が出てくるのを待った。
学校に来てるんだろうな。
寒さに身を震わせながら、偉槻は校舎を眺めた。
…案外いいとこ通ってやがる。
あいつ、頭いいんだな。
地元ではそこそこ名の知れた進学校前にいるのは、偉槻にとって易しいことではない。
…俺の学校とはえらい差だ。
なんだか嫌になって、偉槻は再び足元に視線を落とした。
…というか、だいたいどうして茉理子は誓耶の学校を知っていたんだろう。
それ以前に、どうして誓耶の存在を知っている?
まさか、あいつがバイト先に来たときに見られてたのか?
それなら納得できる。
あの時、誓耶はかなり目立っていたはずだ。
でもどうして学校まで…。
不気味だ。